研究概要 |
肉厚500mm, 高さ1800mmのMg処理球状黒鉛鋳鉄試験体の組織を観察した結果, 黒鉛粒は60〜110μm^φと粗大に成長していたが, 黒鉛粒数(NG)が92〜55/mm^2の試験体の球状化率(SG)は95%以上であった. しかし, NGが67〜30/mm^2となった試験体ではSGが90〜75%へ低下し, とくにNGの少ない最終凝固部のSGが低い. 残留Mg量が0.05%以上であったことから, 健全な超厚肉球状黒鉛鋳鉄を製造するためには, 2時間以上に及ぶ凝固期間中に高い黒鉛核生成能を維持しうる接種技術の確立が極めて重要である. また, 鋳造のままでも本試験体の基地の大部分がフェライト化したが, 黒鉛粒数の少ない部位では共晶セル境界部にパーライトが析出し, フェライト化率が低下した. このパーライトの析出は, 最終凝固する共晶セル境界部にMn, Crの炭化物形成元素が濃縮し, 黒鉛化助長元素のSi, Ni等が減少したことに起因する. 球状黒鉛鋳鉄のフェライト化は黒鉛粒間距離が大きいほど困難になるので, フェライト化率向上の点からも黒鉛核生成を助長する必要がある. 共晶セル境界のパーライトが析出した領域に糸状析出物が観察され, EPMAにより枝別れした黒鉛, ステダイド及びMgやTiの化合物と同定された. これらの生因を究明するには, 凝固冷却過程における各微量元素の挙動を解明する必要がある. IMAの2次イオンの集束状態を制御すれば, 10μm^φ以下の微小領域でも約0.001%までのPを定量分析できる. 鋳鉄の初晶γに対するPの分配係数は約0.06であり, Si及びC量による変化が小さいことから共晶γに対しても同程度と考えられた. 超厚肉試験片のフェライト中のP量は分配係数から予測される値の約10倍に達しており, 冷却過程での拡散量が多い. チル化した鋳鉄と球状化剤と共にマグネシアで包み込み, 1200°Cに再溶解後徐冷した結果, マグネシアの気密性を高め, 球状化剤の溶解過程を制御すれば, かなり高い球状化率を達成できる.
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