研究概要 |
粉末ガス溶射(PFS)ガンを利用して, 強化材(炭化珪素ウイスカー, SiCw)を溶射フレーム中で直接複合化するための溶射条件を調べた. PFSガン先端部に装着したエアーキャップ内面に生じる誘引圧力は, PFSの溶射フレーム速度が小さいため, 最大誘引圧力でも-500Pa程度であり, SiCwの吸引に利用することが困難であった. 従って, 主ノズルからSiCwを空気と一緒に吹出す複合化方式を検討した. 即ち, SiCwはガン本体に入る前に, 誘引圧力-30kPaの吸引ノズルを利用して混合空気流を生じさせ, 空気との混合ジェットとして溶射フレームに吹込むことにより, 純Al溶滴との複合化を実現した. 主ノズルから溶射フレームへの吹出し角度が溶射軸に平行な場合に, MMCプリフォーム中のVfが最大となった. また, エアーキャップ全長がVfに及ぼす影響を調べた結果, 全長30mmの場合にVfが最大となった. 溶射距離を270mmとした場合, MMCプリフォームの直径は約55mmであり, 溶線ガス溶射と比較してフレームは絞られている. 作製したプリフォーム中のVf分布は, 直径50mm範囲内で2〜3%程度の差が認められた. しかしながら, 到達Vfは約6%と極めて低い値であった. SiCwの二次元配向化及び気孔の消滅を目的として熱間鍛造を行い, その引張強度を測定した. Vf=5.3%では134MPaが得られ, 約50%純Alより強化された. Vfの向上が今後の課題である. ガス溶射法による複合化は, 接触するAl溶滴の温度が高いため強化材との良好な濡れ性が期待できる反面, 有害な界面反応が懸念される. しかしながら, 溶射フレーム中の飛行時間は10ms以下と短いため, 反応層が厚く成長しないと推定される. PFS法は本研究のようにマトリックス金属が粉末の場合に有効である.
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