研究概要 |
共晶反応や共析変態によって生成する層状組織を持つ材料は, 両相の長所を兼備した理想的な複合材料としての特性を示し, 構成用あるいは機能用材料として注目されているものが少なくない. この層状組織は一般にはきわめて安定であるが, しかしその後の熱処理や高温での使用中に崩壊してエネルギー的により安定な分散組織へと変化する場合がある. 本研究では層状から球状へと分散化する過程を定量的に把握するために, 2相間の総界面積S_Vを両組織に共通するパラメータとして解析した. 1.Fe-Fe_2Ti系共晶合金 共晶合金をいろいろな冷却速度で冷却して粗さの異なる共晶組織を作製して, これらを1100°Cで加熱保持した. 断面を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡にて観察し, 画像解析装置にて単位体積当りの界面積S_Vを測定した. その結果, S_Vと時間tとの間にはS^V_<-n>-S^<V0>_<-n>=ktの関係が成立した. 但しnの値は初期の共晶組織の粗さに依存し, 非常に細かい時には1時間以内にすべて均一な球状粒子となり, よく知られているオストワルド成長から導びかれる値と同じn=3となった. また粗い場合にはnの値は大きくなり, 例えば冷却速度3°C/分の場合はn=8であった. 2.Fe-C系パーライト Fe-0.8%C共析鋼およびこれにセメンタイトに濃縮するCr,Mn,又母相α相に濃縮するCo,Niをそれぞれ1%添加した5種の鋼について上記と同様の実験を行った. その結果, これら合金ではすべてS^V_<-3>-S^<V0>_<-3>=ktの関係が成立した. 詳しい解析の結果, パーライトの球状化は添加元素のα相中の拡散によって律速され, 又一番速いNi添加に比べ一番遅いCr添加の場合にはその速度は約1/1000となり, この傾向は合金元素のセメンタイトとα相間の分配係数の大きさと関連あることが分った.
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