研究概要 |
電気化学的方式によって, 高温(673-773K)での鋼中水素の透過挙動を調べた. 水素供給および水素検出の両電解質には, 溶融苛性ソーダ(mP=595K)を用い, 水素検出電位は, 安定化ジルコニアに対して設計した. 用いた試料は, 0.2%C鋼, 1/2Mo鋼, 2・1/4Cr-1Mo鋼であり, 全て炉冷処理した. さらに, この測定法を延長して, 実機化学プラント材料中の侵入水素量を連続モニタリングする測定セルの試作も試みた. (1)水素検出電位と定常透過電流の関係から, 水素検出に最も妥当な電位は-0.8〜-0.6V vs Air/O^<2->(2rO_2)であることが分った. (2)水素検出面に, 金めっきのみ, ニッケルめっき上に金めっき, めっきなしの3種類の表面処理を施したところ, ニッケルめっきの上に金めっきを施したものが, 長期間最も安定に透過実験できることが分った. (3)各資料につき, 水素透過実験を連続3回以上行ったところ, 透過電流の遷移曲線はいずれもほぼ同じ形であったが, 2回目の透過速度は1回目のものより2倍早やかった. また3回目以降の速度は2回目のものとほぼ同じであった. このことは, 十分焼鉄んだ材料中のパーライト/フェライト界面や結晶粒界などの深いトラップサイトに1回目の透過実験での水素がトラップされ, それ以降の透過では水素はほとんどトラッブされていない事を意味する. (4)カソード電流を増減して求められた鋼中水素の拡散のための活性化エネルギーは, 鋼種によらずほぼ3kcal/molであった. この値はトラップされていない拡散性水素の拡散の活性化エネルギーと見なされる. (5)高純度アルミナを使用した実機プラントに取り付け可能な電解セルを試作し, 1気圧水素ガスを注入, 排気を繰り返して, 定常水素透過電流を求めたところ, 良い再現性がえられた. このセルの検出感度は, 0.8ppmの水素量であった.
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