研究概要 |
溶接による応力集中部の疲労破壊の解明には, 2次元あるいは3次元的な応力分布を知る必要がある. 本方法は, 溶接部を応力焼鈍することによって生じる溶接部全体の変形分布状態をレーザホログラフィを用いて観察し, これによって, 残留応力を立体的に知ろうとするものである. 研究結果 溶接残留応力分布の観察は, まず試料を600°Cで焼鈍し, 応力解放によって生じた微小変形分布を, ホログラフィ干渉によって行う. しかしながら, ホログラフィ干渉は数十ミクロン程度の試料の移動でも干渉しなくなるので, 炉そのものが熱変形する真空炉内で焼鈍することはできない. また, たとえ試料台は動かなくとも, 試料台に接する部分の試料の応力解放によっても試料全体が傾くことが考えられる. そのときも, 試料全体が動いたときと同様の状態となるので, この傾き等も調整する必要がある. これらは, 以下に示す方法を用いて解決し, 頭書の目的を達することができた. 1 定盤上に3次元(上下左右の他に前後左右の傾斜調整付き)の微調整試料台をのせ, その上においたインバー合金製の三脚の上に試料を置いてガスバーナによって大気中で加熱する. 焼鈍によって生じる試料全体の移動は微調整台によって元に戻す. 2 大気中加熱による試料表面の酸化膜の形成は, 一種の試料移動であり干渉性を悪くする. 試料表面にNiメッキ, Ni蒸着, Ni粉塗装などの保護皮膜を施すことによって酸化皮膜の形成を400°C程度まで抑制できた. しかし, それ以上では干渉縞が弱くなった. 数十ミクロン程度のアルミナ溶射を施した試料が, 600°Cでの大気中での応力焼鈍法でも変化がなく, レーザの散乱性もよいのできれいな残留応力分布写真が撮れた.
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