研究概要 |
最近, 生医学分野や工業分野では極微量元素の役割が重要視されてきている. 人間を含めた生体における栄養素, または毒素としての元素の役割は生理作用, 酵素作用において中核的な働きをすることが考えられている. また半導体やニューセラミックス中の極微量元素の濃度をコントロールすることは製品の品質, 物性に直接関係する. しかし, これらの試料のマトリックスは複雑で, 分析前に前処理を必要とする. この操作中においては, 分析目的元素の揮散, 汚染が必ず伴われる. 元素の濃度が低くなるほどにこの種の問題は深刻となり分析誤差を与える. そこで本研究では, この問題を克服することを目的として試料を前処理なしで直接分析するための発光分析用容量結合高周波熱陰極プラズマ励起源システムの開発を行い, その基礎検討をした. まず, 熱陰極プラズマ放電用ランプを二種類作った. 一つは, 数mg〜数十mgの試料を導入できる黒炉熱陰極を取り付けた放電管であり, 試料を回分的に励起し分析できる. もう一つは, 粉体試料を連続導入できるように, 熱陰極の底の部分に穴をあけた放電管である. 粉体試料はキャリヤーガス(例えばアルゴン)に運ばれて放電プラズマに入り励起される. 次に, 購入した高周波リニヤーアンプを組み込んだ高周波電源のシステムを作った. リニヤーアンプを励振する13・56MHzのクリスタル発振器を作った. そして, マッチングボックスを通し, 最大800Wの高周波電力を得た. そして, 熱陰極ランプの陰極が最高約1800°Cになるのを光高温計で観測した. 次に分光計からの信号をコンピュータに取り込むためのインターフェースを作り, そのためのプログラムを機械語と高級言語で作った. カドミウムの標準溶液で信号を確認したが, 今後, 他の元素及び実際試料に応用していく予定である.
|