研究概要 |
重金属を含む非晶質の場合, X線回折では重金属のシグナルがガラスの骨格を形成するSiO_2やB_2O_3など軽元素化合物の構造情報を隠してしまい, 構造解析が困難となる. しかし中性子回折を用いれば, こうした軽元素の情報も重金属と同等に得られるので構造解析が可能となる. 今回はBaO, Tl_2O, La_2O_3などの重金属酸化物を含むホウ酸塩ガラス, AlF_3を主成分とするフッ化物ガラスのX線回折, 中性子回折による構造解析を行った. ホウ酸塩ガラスは, ケイ酸塩ガラスと異なり, Bの配位数が金属酸化物の含量によって変化すると共にdiborateやtriborateなどのマクロアニオンを形成するため構造が相当に複雑になる. 中性子回折から骨格を形成する軽元素の情報がかなりはっきり得られるので, X線回折で明瞭に得られる重金属元素の情報と組み合わせて構造モデルを構築し, pair-function法を用いてX線, 中性子回折から得られた動径分布曲線と一致する構造モデルを探索した. その結果BaO・2B_2O_3ガラスでは数種のマクロアニオンを含む同組成の結晶とよく似た構造をとり, Tl_2O・2B_2O_3ガラスはやはり数種のマクロアニオンを含むK_2O・2B_2O_3結晶と似た構造をとり, La_2O_3・3B_2O_3ガラスは同組成の結晶と類似の鎮状構造をとることがわかった. 一方, フッ化物ガラスは次世代の光通信用ファイバー材料として注目されているが, まずAlF_3-CaF_2-BaF_2系のガラス化範囲を求めた. 次にAlF_3-CaF_2, 2AlF_3, 3CaF_2, 2AlF_3・BaF_2, 2AlF_3・2CaF_2・BaF_2の四種のガラスを超急冷法で作成し, X線, 中性子回折を測定した. その結果, AlがF36配位していることが明らかになり, この結果はNMR測定の結果と一致した. 構造解析の結果, AlF_3・CaF_2ガラスは鎖状, 2AlF_3・BaF_2ガラスは層状構造をとることが明らかになった.
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