研究概要 |
ペロブスカイト型結晶構造を有する混合導電性酸化物は一般に高いイオン導電性と電子導電性を有し各種機能材料としての応用が期待されている. 本研究は, La_<1-x>Sr_xMO_3(Mは遷移金属)系ペロブスカイト型化合物の高い混合導電性を応用した新方式水素製造用酸化物薄膜材料開発のための基礎研究として当初計画された. しかし, 計画調書提出直後に本申請代表者らは類縁化合物(La_<1-x>Mx)_2CuO_4(M=Ba, Sr, Ca)系における高温超伝導を初めて見いだしたため, むしろ, 高温におけるペロブスカイト系酸化物の熱力学, 固体化学的特性と物性を見直すことがより緊急であると考え, 以下の研究を行った. (1)(La_<1-x>Sr_x)_2CuO_<4-δ>, Ba_2LnCu_3O_<7-δ>(Ln=Y, Gd, Nd, Smなど)の平衡酸素欠損量を高温微重量法により精密に測定し, 欠陥構造, 安定性, 物性との相関に関する考察を行った. (2)酸素の化学拡散係数を化学緩和法により測定し, 良好な超伝導特性を発現させるための低温アニール時に必要な基礎データを提供した. (3)Ba_2LnCu_3O_<7-δ>(Ln=Y及び一連の希土類)の高温電気伝導度を酸素分圧, 温度の関数として系統的に測定し, 欠陥構造に関する議論を行うと共に, 低温物性の測定結果との比較を行った. (4)(La_<1-x>Sr_x)_2CuO_<4-δ>系では高温で調整した試料でも結晶格子内に残留する水分が存在し, 超伝導特性にも大きな影響を与えることを示した. またBa_2LnCu_3O_<7-δ>系化合物は200°C程度で空気中に含まれる水, 炭酸ガスなどの不純物と強い相互作用を示すことを見いだした. (5)金属アルコキシドを用いたゾルゲル法による超伝導薄膜の作製を行なった. 溶媒を選ぶことにより濃度の高いBa, Y, Cu混合アルコキシド溶液を得るとともに, アルコキシドディップコーティング法による薄膜作製に初めて成功した.
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