研究概要 |
金属酸化物と金属イオンとの相互作用に関するモデルを提出した。金属酸化物ミクロ粒子としてαーアルミナ粒子を用い、金属イオンとして亜鉛イオンを用い、モデルの検証を試みた。相互作用のモデルは以下のような考えに基づく。亜鉛イオンを含む溶液にアルカリを添加してpHを高めていくと、あるpHで水酸化亜鉛が沈殿し、溶液pHの上昇がほとんど認められなくなる。αーアルミナが共存する溶液で同様にアルカリ添加を行うと、αーアルミナと亜鉛イオンの相互作用が、あるpHで強く起き、溶液pHの上昇はほとんど認められなくなり、しかもこのpHは水酸化亜鉛が生成するpHよりも低いと考えられる。即ち、水酸化亜鉛が生成するのを、Zn^<2+>,O^<2->,Zn^<2+>の間に結合が生成するとみると、この結合が生ずるより低いpHでAl^<3+>,O^<2->,Zn^<2+>の間に結合が生成すると考えられる。この結合が、水酸化亜鉛が生成するより低いpHで起こると考えここで、このpHの低下分ΔpHを基に2.303RTΔpHで相互作用の強さを表すことができる。このモデルの妥当性の確認のため、同様の実験を他の金属酸化物ミクロ粒子(二酸化チタン、二酸化マンガン等)や二価金属イオン(コバルトイオン、銅イオン等)を用いて行った。このようなモデルの妥当性を更に検討する目的で、分散めっきにおける粒子の共析に関して金属酸化物ミクロ粒子とめっき浴中の二価金属イオンの相互作用、ガラスの応力腐食に及ぼす二価金属イオンの影響等を調べた。一価金属イオンについては金属酸化物・水溶液系の界面現象に関する実験で基本になるイオンと考え、pH滴定実験や電気泳動実験を繰り返し、等酸点や等電点、イオンの吸着量を詳細に検討した。熱量計を用いる熱量測定で、強い相互作用に基づいて結合が形成される際のエネルギー変化を求めようとしたが、界面反応量が非常に少ないことや反応の速度が遅い(溶液内均一反応に比べて)ことで、期待したような結果が得られなかった。
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