研究概要 |
耐食性金属材料の応力腐食割れにともなう腐食電位の振動をFFT(Fast Feurier Transform)を用いて解析し, 以下の成果を得た. (1)水酸ナトリウム溶液中における炭素鋼の苛性割れ:炭素鋼(700°C×1hr→AC)を0.125%PbOを含む35%NaOH溶液(11°C)に浸し負荷応力を加え, 腐食電位の変動を測定した. その結果, パワースペクトル密度の変化が5mHg付近で認められた. そして, 浸漬後20時間以内では, 不働態被膜の破壊と修復に関する信号が得られ, 20時間以後では微小き裂の発生(伸び計により検出)に伴なう信号をとらえることができた. (2)高濃度塩化物溶液中におけるオ-ステナイト系ステンレス鋼の応力腐食割れ:高濃度塩化物溶液として、42%MgCl2溶液(140°C)、60%CaCl_2(122°C)おらび20%NaCl+1%Na_2Cn_2O_7溶液を用いた。SUS304鋼をこれら塩化物溶液に浸し(1)と同様の実験をおこなった。さらに、腐食電位のゆっくりとした変化は統計処理によりとり除いた。その結果、10〜100mHgの周波数域において顕著なバワ-スペクトル密度が得られること、しかも不働態被膜の破壊と修復の方が微小き裂によるスペクトル密度が大きいこと、42%MgCl_2や60%CaCl_2溶液より実環境に近い20%NaCl+1%Na_2Cr_2O_7溶液での方が信号が大きいことが判明した。 以上の成果は, 応力腐食割れの機構の解明という基礎的研究に役立つとともに, 実装置での応力腐食割れの予知という実用面での展開ができると考えている.
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