近年、規則性のある分子配列をもま結晶性層状化合物が新しい機能性材料として注目を浴びている。層状化合物は限られた二次元層空間を持つ構造材料であることから、層間に触媒機能を植えつけることが出来れば新しいタイプの分子形状選択性をもつ機能材料を創成ことになる。リン酸ジルコニウム(ZrP)も層状化合物の一種であり、イオン交換やインターカレーションによって層間距離や触媒活性種をコントロールすることが可能である。初年度より層間距離の異なる三種のZrPを主に合成し、その合成法の確立と構造解析を行った。結晶構造の解析は熱分析、XRDによって行うと共に、^<31>P-MASNMRによってZr層面の上下に位置するリン四面体の電子状態を詳細に検討した。固体酸触媒として高活性を示すZrP結晶は合成後特定の温度で加熱処理することが得られる。この時層間のP-OH基の一部が縮合脱水してP-O-P結合となり、リン原子の電子密度がP-O-P結合に集中し、その結果として残存するP-OH基のプロトン化の能力が高まったと考えられ、高活性触媒を設計する重要な知見が得られた。しかし高活性触媒の層間距離は8.6Aと狭く、かさ高い反応基質の反応場とするのは困難である。そこでZrP層間にかさ高さの異なるホスホン酸有機誘導体を植え付け、層間距離を増大させることを試みた。有機誘導体としてはメチル、フェニル、ドデシルホスホン酸などを導入し、最大35A^^0まで層間距離を増大させた。この様な複合化した層間距離の大きなZrP結晶は新規な触媒材料、あるいはイオン交換体としての応用が期待できる。合成した複合ZrP結晶を触媒として有機酸のエステル化あるいはエステルの加水分解反応に用いたところ、複合化ZrPはZrP単独より触媒活性が高く、かつ加熱活性化処理を必要とせず、層間距離の増大によって反応場が増大したことが解った。今後P-OHの変りにP-CH_2SO_3H基を導入することを試みて行く予定である。
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