研究概要 |
混合アルコールはアルキル鉛に替わるオクタン価向上剤としての用途が期待される. アルカリ添加シリカゲルに担持したモリブデン系触媒を用いた合成ガスからのC-Csの混合アルコール合成を行なった. 筆者らの開発したシリカ担持モリブデン触媒は炭化水素生成を抑制し, 高いアルコール合成選択性を示す優れた触媒であるが, 低温での活性がやや低いこと, 空時収量を上げた条件ではC_2+アルコール/メタノール比が1程度と低下すること, が問題点である. この点の改良を目指しIVB-VIII族金属を添加することにより, 複合系もしくは合金系とした触媒系の開発を目指した. モリブデン/アルカリ添加シリカゲル触媒に, C-O結合の開裂能を有する金属であるNi, CO挿入能を有するCo, 酸素への親和性を有するFe, Mn, メタノール合成能を有する元素(Cu, Cr)等を添加した触媒を調整し, 300度Cで, その性能を調べたところ, Fe, Co, Niの場合にのみアルコールの収量が増加した. しかし, アルコール選択性はいずれの場合にも無添加の場合に比べて大きく低下したので, 反応を250度Cで行なったところ, Mo添加の場合にアルコール収量, 選択性を兼ね備えた触媒系が実現した. そこでMo-Ni系について詳細に検討し, Mo(3wt%)-Ni(7wt%)の場合にアルコール合成活性, 選択性ともに高く, しかもC_2+アルコール/メタノール比が5を越えることが明らかにした. また, この触媒で反応条件について検討したところ, 300度C, 7.1気圧, W/F=2.2g-cath/molで, アルコール空時収量0.3g/kg-cath, 選択性68wt%とすることが出来た. 高活性触媒についてはX線回折によりMo-Ni合金が確認され, 活性との関連が示唆された. 直鎖/分枝選択性ならびにその圧力依存性がMo系に類似していることから, アルコール合成の活性点はMoの性格が強いこと, エチレン添加実験よりオキソ反応タイプの経路によりアルコールが生成していることが推定された.
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