研究概要 |
合成粘土鉱物の一種であるフッ素四ケイ素雲母(TSM)のTiイオン交換体を調製し, メタノール転化反応に対する触媒活性を調べた. 購入したガスクロマトグラフをサンプリングバルブを介して, 既存の固定床流通式反応装置に直結し, 反応生成物の分析を行った. TSMそのものは触媒活性を全く示さなかったが, Ti(IV)イオン交換型のTSMは, メタノールの脱水反応を促進し, 反応温度350°Cにおいてジメチルエーテルと少量のメタンを生成した. 一方, 新たに作成した真空系の装置を用い, アルゴン雰囲気下慎重に調製したTi(III)イオン交換型のTSMは, 同じ反応温度で殆ど触媒活性を示さなかった. Ti(IV)イオン交換型のTSMに少量のZn, Clイオンを添加すると, その触媒活性は一変し, 脱水反応のみならず脱水素反応をも促進するようになる. 生成物としては, 脱水生成物であるジメチルエーテルの外に脱水素生成物であるギ酸メチル, ジメトキシメタンなどが見られるが, 特に興味深いことは, 炭素-炭素結合を有する含酸素化合物が生成することである. この含酸素化合物は極めて多種に亘り, 酢酸メチル, アクリル酸メチル, プロピオン酸メチル, メタクリル酸メチルなどのエステル類, アセトン, メチルビニルケトン, メチルエチルケトンなどのケトン類, イソブチルアルデヒドなどを含んでいる. これら含酸素化合物は, Ti(IV)型TSMにZn, Clの両方を含む場合にのみ生成し, その収率は触媒中のClイオン量に大きく依存する. 最大収率は, ClイオンがTi(IV)イオンに対し1モル%以下の触媒で得られた. 生成した含酸素化合物のうち, アクリル酸メチルは酢酸メチルの, また, メチルビニルケトンはアセトンのビニル化生成物と考えられる. そこで, 酢酸メチルとメタノール, アセトンとメタノールの反応を行ったところ, Ti(IV)型TSM上でそれぞれアクリル酸メチル, メチルビニルケトンが高選択的に生成した.
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