研究概要 |
加水分解酵素リパーゼは本来の気質のトリグリセリド類の他に, 種々のエステルを加水分解する触媒となり, また, その反応において立体特異性を示すことが報告されている. そこで本研究では, 気質として(R,S)-アリール酢酸エステル, 酵素としてブタ膵臓リパーゼ(PPL)を用いて加水分解反応を行い, その不斉識別能について検討した. 気質はマンデル酸メチル(1__〜), エチル(2__〜), プロピル(3__〜)のカプロン酸誘導体及びアトロラクチン酸エチルのカプロン酸誘導体(4__〜)等を用いた. 反応はヘキサンーエタノール混合溶媒に気質を入れ, 乳化剤としてポリビニルアルコール(PVA)等を添加し, pH一定の緩衝液と酵素を加え電磁攪拌した. 反応後サンプリングし, GLCにより転化率HPLCにより光学収率を決定した. 気質4__〜は, 1__〜, 2__〜, 3__〜に比べて反応性に乏しく光学収率は測定できなかった. 気質1__〜, 2__〜, 3__〜に対する生成物はマンデル酸エステルであり, 常にS体が有意に生成した. 気質1mmolに対する酵素量が10000ユニットの時と1500ユニットの時とを比較した. 気質2__〜は転化率20%の時に光学収率70%であり, 調べた中では良好な結果が得られた. 転化率および光学収率はエステルのアルコール部分R^2の大きさに依存しておりR^2基が大きいときは反応速度は低下し, 逆に光学収率は増大することを見い出した. 実験条件の変化による影響:1.乳化剤:PVAなしで実験を行った場合, 反応速度が低下した. またPVAのかわりにポリビニルピロリドン(PVP)を用いた場合, 転化率および光学収率はPVAを用いた時とくらべてほとんど変化なかった. 2.緩衝溶液:0.05Mリン酸緩衝溶液(PH7.8)と0.05Mホウ酸緩衝液(PH8.6)では前者のほうが反応速度は大きく, 良好な結果が得られた.
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