研究概要 |
申請者らは, 6, 6'-diamind-2, 2'-bipyridine(DABP)およびその誘導体の配位子としての分子機能について検討をおこなっており, ビス(アシルアミノ)誘導体ではN_2O_2四座位子となることを明らかにしている. 本研究ではアシル基部位に金属配位能を有する官能基を導入することにより, 二核錯体生成能を有する多座配位子の合成を試みた. すなわち, アミノ酸やサリチル酸の官能基を保護したのち酸クロリドとし, DABPのアミノ基と反応させて得られるアシル誘導体を脱保護して目的とする多座配位子を合成した. その結果, アシル部位にアミノ基を持つ誘導体としてビス(フェニルアラニルアミノ)-2, 2'-ビピリビン(1), ビス(アラニルアミノ)-2, 2'-ビピリジン(2), ビス(β-アラニルアミノ)-2, 2'-ビピリジン(3), ビス(γ-アミノプロピオニルアミノ)-2, 2'-ビピリジン(4), およびビス(α-ピコリルアミノ)-2, 2'-ビピリジン(5)を得ており, またアシル部位に水酸基を持つ誘導体としてビス(o-ヒドロキシンベンゾイルアミノ)-2, 2'-ビピリジン(6)を得ている. これらの新規な多座配位子については, その組成・構造・物性を元素分析や各種スペクトル法などにより明らかにした. 次に, 得られた配位子1-5とCu(II)との錯生成についてジメチルスルホキシド中で検討した結果, いずれの場合にもまずビピリジン環窒素およびアミド酸素がCu(II)に配位したN_2O_2型1:1錯体を形成したのち, もう一分子のCu(II)がアミド酸素およびアシル部位のアミノ基に配位した複核錯体を生成していることが明らかとなった. また1と各種二価金属イオンとの錯生成挙動やその安定性についても検討をおこない, Ni(II)やCo(II)でもCu(II)と同様な複核錯体が形成されていること, 複核錯体がプロトン性溶媒中で加水分解を受けやすいことなどが明らかとなった.
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