研究概要 |
蛋白構成アミノ酸に属さない新規β、γー不飽和αーアミノ酸は顕著な生理活性を示す点で注目されているが、天然の存在量が微量であるためその有機化学的合成が興味を持たれている。 本研究は、ヒドロキシアルキル基とカルボキシル基の2つの官能基を2つのアリル炭素上に有する二官能基化πーアリルパラジウム錯体を触媒的に生成させ、窒素求核剤に対する2種の官能基の配向性を利用して、β、γー不飽和αーアミノ酸あるいはα,βー不飽和γーアミノ酸骨格を合成しようとするものである。 Pd(O)触媒を用いて、γ、δーエポキシソルビン酸メチル(1)と窒素求核剤(2)(フタルイミド(2a)、アリールスルホンアミド(2b)、ジエチルアミン)との反応により、α,βー不飽和γーアミノ酸誘導体(3)が位置特異的にえられることが明らかになった(式1)。位置特異性は配位子(P(OCH_2)_8CEt,PPh_3、PCy_3、PEt_3、dppf)や溶媒(THF、C_6H_6ーTHF、DMSO、DMF)によって変化しなかった。酸性度の高いプロトンを有する(2a)、(2b)が高収率で(3)を与えた。カルボキシ官能基をエステルからアミドに変えても位置特異性は変化しなかった(式2)。 以上により、Pd(O)触媒を用いるγ、δーエポキシソルビン酸誘導体と窒素求核剤の反応は、α,βー不飽和γーアミノ酸誘導体の便利な合成法となることが明らかにされた。
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