研究概要 |
1.三級ホスフィン{2,6ー(CH_3O)_2C_6H_3}_3P[以下、(2,6)_3Pと略記]を過酸化水素で酸化して(2,6)_3P=0に導いた。トリフェニルホスフィンPh_3P=0が水に不溶であるのに対し、(2,6)_3P=0は異常に高い水溶性を示した(1g/8ml)。またPh_3P=0と異なり、(2,6)_3=0は酸と反応して安定なヒドロキシホスホニウム塩[(2,6)_3P-OH]X(X=C10_4,BF_4)を与える。この塩(X=C10_4)はKOHにより(2,6)_3P=0を再生するが、各種のアミンとは安定な1:1付加体[(2,6)_3P=O,HNR_3]C10_4を生成する[発表論文1]。 2.(2,6)_3Pと元素イオウの反応によりスルフィド(2,6)_3P=Sを得た。 Ph_3P=Sと異なり、(2,6)_3P=Sは過塩素酸と反応してヒドロチオホスホニウム塩[(2,6)_3P-SH]C10_4を生成する。また(2,6)_3P=Sを酸の存在下、溶液中で加熱すると容易に脱硫して3級ホスホニウム塩[(2,6)_3P-H]Xになる。同様に合成したセレニド(2,6)_3P=Seは酸により室温でも脱セレンする[発表論文3]。 2,6ージメトキシフェニルリチウムとイオウの反応後、酸で加水分解して2,6-ジメトキシベンゼンチオール(2,6)SHを合成した。このチオールはベンゼンチオールPhSHと異なり、無臭、結晶性であり、PhSHよりもハロゲン化アルキルに対して求核性が高い。さらに、ArSH、ArSAr、ArSSAr、ArSCH_2CH_2SAr、ArSCH_2CH_2CH_2SAr型化合物{Ar=Ph,2-CH_3OC_6H_4,(2,6)}を比較したところ、これらの結晶性がAr=Ph<2-CH_3OC_6H_4<(2,6)の順に良いことが判った[発表論文2]。 4.(2,6)_3Pや{2,4,6-(CH_3O)_3C_6H_2}_3P、あるいはこれらの4級ホスホニウム塩は塩酸水溶液中の特定の金属をPh_3Pよりはるかに高効率で有機溶媒中に抽出することが判ったが、大阪大学工学部との共同研究として報告した[発表論文4、5]。
|