研究概要 |
3倍に延伸して配向させたボリ〔ビス(トリフルオロエトキシ〕ホスファゼン〕フィルム及びボリ〔ビス(フェノキシ)ホスファゼン〕フィルムを作成し, パルスNMR法によりT2緩和時間の温度依存性を室温から180Cにわたって測定した. その結果分子運動性は, 無配向の試料と比べて著しい差は見られず, この程度の分子鎖配向性はボリホスファゼン分子鎖運動を束縛しないことが明らかとなった. 動的構造成分比すなわちNMR法から見積られる結晶部分割合, 比部分割合及びメソモルフィック相の割合も等方的試料と大きく変わらなかった. このため, フィルムを5倍及び10倍に延伸させ, 強く分子配向をさせてその効果を調べる事を繰り返し試みたが, 用いたボリホスファゼン試料の分子量が比較的小さいためいずれも3倍以上に配向させることが困難であった. この高分子の高配向試料を作成して分子鎖運動性の変化を検討する試みは今後も継続される. さて, これらの配向試料についてDSCによる熱解析を行い, 相転移に伴う熱量変化を調べた. さらに, 相転移と結晶変態の関係を明らかにするため, 昇温X線回析実験(科研費により購入したX線回析データ処理装置を使用)を行い, 回析角測定精度を高めながら結晶相/メソモルフィック相転移すなわちT(1)転移と結晶多形の関係を詳細に検討した. これらの構造学的知見と上記の分子運動性検討結果との関係を考察した. また, 偏光顕微鏡に加熱試料台を取り付け, ベレク・コンベンセンターを用いて配向試料が示すT(1)転移点前後の複屈折変化を検討した. T(1)温度以上の熱処理により結晶変態が生じると複屈折は増大し, 相対的に分子鎖間相互作用力が低下することを見いだした. これらの結果はNMR測定結果と矛盾しない. 以上の研究成果は, 関連するボリボスファゼンの構造学的研究と共に投稿を行っており, また1988年の国際学会において二件を発表の予定である.
|