研究課題/領域番号 |
62550650
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
高分子物性・高分子材料
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
香田 忍 名古屋大学, 工学部, 助手 (10126857)
|
研究期間 (年度) |
1987 – 1988
|
研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
1987年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
|
キーワード | デオキシリボ核酸 / イオン結合 / 高分子溶液の音速度 / ポリリン酸 / Na^+の活量 / 高分子溶液の音速 |
研究概要 |
本研究は、上記研究課題に基づきDNAとナトリウムイオン(Na^+)とのイオン結合に関する知見を音速度と密度から得られる断熱圧縮率から求めることにある。本研究の成果の一つは、従来の音速度測定装置を改良し20ml程度のDNAなどの生体高分子溶液の音速度が1cm/sの精度で測定可能となったことである。DNAとNa^+の相互作用をより明らかにするためにリン酸基のみからなるポリリン酸に対するNa^+のイオン結合度を音速度測定から求めた結果、約0.25〜0.30となった。またイオン雰囲気的なイオン結合を与える活量の解析から得られたイオン結合度は、0.3程度であった。音速度から得られるイオン結合度は高分子イオンの水和層に進入したNa^+の割合を与えることから、ポリリン酸では、高分子自身非常に電荷密度が高くイオン結合に関与するNa^+は大部分ポリリン酸の水和層を乱す程度まで近づいていることがわかる。DNAにNa^+を加えた場合の溶液の音速度は、水にNa^+を加えた場合と同様に塩濃度に対し直線的に変化した。この結果は、DNA溶液に加えられたNa^+は、DNAのリン酸基の周りの水和層に特別な変化をもたらしていないことを示している。また、DNAのNa^+の活量の測定から、イオン雰囲気的な結合が約30%存在することが明らかとなった。すなわちDNAのリン酸基はアデニンなどの塩基に取り囲まれポリリン酸に較べ電荷密度が低く、Na^+はDNAの水和層を乱すほど進入できないと考えられる。 今後の課題としてポリイオンと対イオンの相互作用をさらに詳しく検討するためには、DNA及びポリリン酸などの高分子イオンの水和層を定量的に評価することが必要である。さらにポリリン酸水溶液で観測したNa^+低濃度域での音速度の低下から予測される高電荷密度を有する高分子イオン水溶液の溶液構造の変化を調べることも今後の課題である。
|