研究概要 |
核酸の機能の解明は化学的測定手段によらねばならぬ面が, 今日的になりつつある現状において, 核酸フラグメントの大量合成は重要な研究課題である. 本研究は, シーケンスをもつDNAやRNAフラグメントの大量化学的合成を目的とした. そのためには, 選択的りん酸化剤を開発することによって, ヌクレオシドを保護操作を行なうことなく, 選択的にりん酸化, 選択的カップリングを行なう合成系の実現を目的とした. 本研究は, シーケンスをもつDNAフラグメントの1つの有力な大量合成法として, その中間体二量体の合成とそれによるオリゴヌクレオチド合成の可能性の検討と, シーケンスをもつRNAフラグメントの大量合成を中心として, これに, シーケンスをもつオリゴヌクレオチドの分離, また, センサーへの応用を行ったものである. (1)シーケンスを有するDNAフラグメントの合成としては, りん酸化剤として各種ジアゾリドのうちジテトラゾリド, また保護基としてはモルホリノ基がこの目的のために好適であることを明らかにし, このりん酸化剤をもって, 水酸基を保護しないヌクレオシドから, 各種二量体が均一系で高収率で得られることを明らかにした. また, この二量体は, 5´-方向, 3´-方向のいずれにもシーケンスのある鎖長延長が可能であり, さらに, 二量体のカップリングによる四量体の合成も行なわれた. 一方, (2)シーケンスをもつRNA二量体の合成には, ホスホロジクロリドがりん酸化剤として適しており, 非保護ヌクレオシドからテトラゾールを触媒として適当であることを明らかにした. 上記2つの方法は, 均一系でDNAやRNAフラグメントが容易に合成できることを示すもので, 本研究では, これに加えて, 大量のオリゴヌクレオチド(重合度〜50)分離のカラムシステムを提出し, 一方, 光重合の方法を応用した半導体コロイドへのオリゴヌクレオチドの固定と, そのコロイドによるRNAの検出法を見出した.
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