研究概要 |
チミン, ウラシルなどのピリミジン塩基は紫外線照射により可逆的にシクロブタン型フォトダイマーを生成することが知られている. この反応をフットレジストとして利用し, 高感度, 高解像度のフォトレジストを設計, 開発することに成功した. 本研究はピリミジン塩基の可逆的光反応を利用して, 分子レベルでの超微細, 可逆的光記録材料の設計, 開発を目的とした. 本研究では, ピリミジン塩基による可逆的な光二量化反応をLB膜で行なう光記録材料として応用する為に, 長鎖アルキル基を有するピリミジン化合物を合成した. ピリミジン塩基としては, チミン, 6-シアノウラシル, オロチン酸を用いた. それらの化合物について溶液中および, フィルム状態での光二量化反応及び光開裂反応を, 二量化反応には280nm,開裂反応には250nmの光を陽射して溶液の紫外線部における250nm〜300nm付近の特性吸収の吸光度を測定することで反応を検討した. その結果, 1-ドデシルチミンは透明なフィルムが得られ, 非常に高い光反応性と共に, 可逆的反応に対する非常に高い耐久性を有することが確認された. また, オロチン酸誘導体は水溶性であるが, 界面活性剤(SDS)を臨界ミセル濃度(CMC)以上加えた混合ミセルの形成された水溶液中で反応性が極端に向上することも確認された. LB膜の累積膜における光反応を行なうには至らなかったが, 累積膜の可能性をはπ-A曲線より得られた. 一方6-シアノウラシル誘導体は高感度であり光可性も見られた. 以上の研究成果により, 長鎖を有するピリミジン化合物はLB膜への累積が可能であり, 光反応性は高感度であり, 繰り返しの光可逆反応に耐久性を示す有望な分子レベルえの光記録材料であることが明らかとなり, 実用に向けこの開発研究は急務であろう.
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