研究概要 |
回分晶析における製品結晶の粒度分布は, 商品価値を左右する重要な特性である. 一般には, 粒度の揃った(分布巾の狭い)製品が望まれる. また, 粒度の大きい結晶が得られれば, 母液(不純物を多量に含む)の分離は容易になり, 製品結晶の純度が向上する. また, 分離コストも著しく低減する. 本研究では, 水溶液系におけるカリミョウバンの回分晶析について検討した. 先ず, 予備的研究で可能性のあった水(溶媒)添加効果について調べた. 冷却の途中で, 晶析器内の種晶および2次核(これが成長して製品となる)の懸濁液に少量の水を添加すると確かに製品結晶の粒度は変化し, 水添加が粒度分布改善の一方法と成りうることが示された. しかし, データの再現性が乏しくさらに詳しい検討, あるいは, 作用メカニズムの追求が必要と思われた. 作用メカニズムの追求はこれからの課題として, データの再現性について検討してみた. 種晶表面の微分干渉顕微鏡像をビデオディスクに録画し, 画像解析により表面の微視的形状を数値化した. これと並行して, この種晶表面をガラスロッドで叩き(回分晶析とは別な実験), 2次核を発生させた. 種晶表面の微視的形状は, 個々の種晶によって大きく異なりそれに伴って2次核発生の度合も大きく変化することが明らかになった. 種晶によって, 2次核の発生の仕方が異なることが, データの再現性の乏さの一因と思われた. 次いで, 微量添加物による製品結晶粒度分布の改善を試みた. 添加物としては, ビスマルクブラウンを用いた. これは, 文献によるとカリミョウバンの結晶成長を抑制する作用があるにもかかわらず, 製品結晶の粒度はこれの添加により, 増加した. 例えば, そのままでは平均粒度600μmであった製品結晶が, 約20ppmの添加で900μmにもなった. この現象は, 実用的にも原理的にも興味深い. 今後の課題とする.
|