研究概要 |
本研究では, 超音波が反射して定常波を形成する場合の移動現象について検討を行い, 興味深い知見をいくつか得た. その実験法および結果を交付申請書に記載した研究計画にしたがって簡潔に記載すれば以下のようになる. 1.実験装置は28KHzのフェライト振動子上にアクリル製水槽を取りつけ, 空気を反射板としたものである. この反応槽中に0.1MCuSO_4, 1.5MH_2SO_4からなる電解液を入れ, 物質移動実験を行った. 2.物質移動の測定にあたっては, 陰極としての銅球をいわゆる限界電流を示す電圧に保ち, 物質移動速度を拡散律速の条件下で求めた. それと同時に銅球に生ずる超音波放射圧をストレインゲージで検出し, 超音波の平均エネルギー密度も求めた. 3.定常超音波内における球からの物質移動を測定した結果, 移動速度は粒子速度の腹の位置で極大, 節の位置で極小を示すことが明らかとなった. また, 超音波の強度が高くなるほど移動速度が大きくなるという結果が得られた. つぎに比較のために伝熱実験を行ったが, この場合には, 物質移動の場合とは相反するという興味深い結論が導かれた. この理由として, 銅球近傍に働く力(放射圧)が物質移動と熱移動とでは逆に作用しているためであるという事実が挙げられる. なお, 上記で述べた実験は, すべて脱気状態で行われているが, いわゆるキャビテーション存在下では当然のことながら通常の5〜10倍高い移動速度を示す. 以上, 1〜3が本年度中に完了した本研究の知見の概要である.
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