研究概要 |
1.荷電型限外濾過膜の製膜・・非荷電状態のタンパク質をほとんど透過するような大きな分画分子量の限外濾過膜の製膜法の検討を行った. 負の荷電膜としてスルホン化ポリスルホン(SPS), 正の荷電膜として, 4級アミノ化ポリスルホン(APS)を用い, 製膜条件(ポリマー濃度, 製膜温度)の検討及び不繊布上への製膜法の開発を行った結果, 分画分子量が100万程度の膜を得ることが可能となった. 2.タンパク質の分離実験・・タンパク質(チトクロームC, アルブミン(BSC), ミオグロビン, グロブリン)を用い, 溶液pHを変化させて透過実験を行った. APS膜(正荷電)でのBSC透過実験の場合, 等電点であるpH4.9での阻止率(Robs)は約0.4であるが, BSAがプラスに荷電するpH3.8ではRobsは0.7まで上昇し, また膜透過流束(Jv)も回復した. SPS膜(負荷電)でのミオグロビンの透過実験の結果では, マイナスに荷電するpH10から等電点のpH7にすると, Robsは0.9から0.4へと大きく変化した. SPS膜, APS膜ともに膜とタンパク質溶質との電気的相互作用によりRobs, Jvが変化していると考えられ, タンパク質の等電点分離が可能なことを示した. タンパク質混合系(ミオグロビンーチトクロームC)での分離実験を, チトクロームCの等電点であるpH9で行った結果, チトクロームCのRobsはほぼ0であったが, マイナスに帯電したミオグロビンのRobsは85%であった. 荷電型限外濾過を用いることで, タンパク質2成分系でも等電点分離が可能であることが明らかになった. また, 膜と電場を組合わせた電気限外濾過法については, 荷電膜と組合わせる前段階として, 中性膜であるアセチルロース膜で分離実験を行った. タンパク質単一成分の場合, 溶液のpHに応じた荷電状態と電場の向きに応じて, タンパク質の濃縮や阻止が生じた.
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