研究概要 |
ゼオライト触媒の結晶内には炭化水素の分子の大きさと同じ大きさの細孔をもつ. 活性点である酸点の多くは細孔内に存在するので, 反応物と生成物の拡散速度に大きく反応の選択性が規制される(形状選択性). しかし, 結晶外表面の酸点上では立体的制約を受けない反応が進行するので触媒活性・選択性が結晶内・外表面の酸強度分布に密接に関係する. 本研究では以下の1.2.について研究を行なった. 1.結晶内・外表面の酸強度分布の測定:我々は既に, ハメット指示薬の酸点への化学吸着等温線から酸強度分布を求める方法を提出している. そこで, ゼオライトの結晶内には入れない分子径が1nm以上の指示薬を用いて, 本法により結晶外表面の酸強度分布を求めた. 一方, 我々は別に, アンモニアの昇温脱離スペクトルから酸強度分布を求める新しい方法を開発した. アンモニアの分子径は小さいため, 結晶内・外表面の酸点を合わせた酸強度分布が得られる. 二つの方法で求めた分布の差から結晶内の酸強度分布を得た. 本法で, 6種類のHZSM-5ゼオライト触媒の結晶内・外表面の酸強度分布を得た. 結晶内・外表面にはH_0=-14の強酸点が分布する. そして, 結晶外表面にはH_0≧-4の弱酸点が多く分布しているのがわかった. 2.形状選択性に与える結晶内・外表面の酸特性と結晶内拡散の影響:結晶内だけ, 結晶外表面だけに酸点をもつHZSM-5触媒を調製し, この触媒を用いてトルエンのメチル化とキシレンの異性化反応を行なった. さらに, 酸点をもたない触媒を用い, 反応温度での反応物と生成物の結晶内拡散を測定した. そして, 結晶内・外表面の酸特性と結晶内拡散の形状選択性への影響を解析した. 形状選択性は結晶サイズと結晶外の酸量に強く依存し, これらの関係を線図にした. この図は触媒設計に非常に有用であることがわかった.
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