研究概要 |
本研究の対象バクテリアEnterobacter sp.AGR7株について、種の同定を行い、生理学的試験からEn.cloacaeであると判定できた。また、このバクテリアのライソザイムライゼイトより細胞質遺伝因子pAGR7を検出した。検出した細胞質遺伝因子は、分子量20Mdal以上と推定される大きなものであった。En.cloacae AGR7よりpAGR7を抽出・調製し、大腸菌Escherichia coli C600-1を形質転換した。形質転換により、銀耐性濃度は<20mg/lから1,600mg/lへと80倍以上上昇し、銀耐性能および銀蓄積能の形質を与えることができた。また、En.cloacae AGR7のDNA断片をpUC18とライゲーションし、E.coli JM109を形質転換した。確認した約15,000個のコロニーより、66個のコロニーが200mg/lの銀を含むプレート上で生育した。これらはすべて、銀40mg/lを含む液体培地では増殖することはなく、インタクトなpAGR7による形質転換体での銀耐性発現とは、その効率が異なっていた。 種々の条件で培養・調製したEn.cloacae AGR7細胞を圧力10,000psiのフレンチプレスで破砕し、超遠心分離で細胞質画分を分取し、ゲル濾過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーでさらに分画した。溶出画分それぞれについてUV280nmでペプチドを、またUV254nmで核酸をモニターした。また、溶出液を誘導型発光プラズマ分析器または原子吸光分析器に導き、銀を測定した。その結果、銀イオン投与後2時間の細胞質画分においてUV254nmで十分モニターできる程度のRNAの増加が観察でき、核酸レベルでの誘導が確認できた。銀蓄積能に関しては逆に、誘導による減少が別途明らかとなった。また、分子量約7,000でメルカプト基に富む点で、真核生物で知られているメタロチオネインと類似の短鎖ペプチドを確認した。
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