研究概要 |
1.ソマクローナル変異として生じる体細胞突然変異の生成量を推定する方法として, まず葉緑体DNAの制限断片の泳動パターンを比較する方法を検討した. N.plumbaginitoliaおよびN.tabacumの葉肉プロトプラスト由来の再分化植物, 各約50個体について葉緑体DNA制限断片のゲル電気泳動パターンを元の個体と比較したところ, ほとんど変異は認められなかった(未発表)ため, 葉緑体DNA制限断片の泳動パターン比較による方法は, 体細胞突然変異生成量の推定方法としては感度が低いと考えられた. 2.次に, 核DNAの制限酵素分解物と反復配列DNAプローブのサザンハイブリダイゼーションにより反復配列DNAの泳動パターンを比較する方法について検討した. 材料にはユリ科のミドリアマナを用い, 核DNAの制限酵素分解物として得られた反復配列をクローニングした. これをプローブとして, ミドリアマナのカルス由来再分化植物で核型, 水溶性タンパクの等電点電気泳動パターン, パーオキシダーゼアイソザイム泳動パターンに変異の認められない個体と元の個体について反復配列の泳動パターンを比較したところ, 高頻度の変異を検出でき, この方法は感度が高く, タバコ再分化植物のDNA変異の分析にも適用できるのではないかと考えられた. 3.UV非照射のタバコ葉肉プロトプラストのミクロオートラジオグラフィーにより培養初期の不定期DNA合成の検出を試みたところ, 修復合成は分裂前の葉肉プロトプラストでは認められたが, そのカルスに由来する懸濁細胞プロトプラストでは認められなかった. UV非照射葉肉プロトプラストではピリミジンダイマーがHPLCで検出されなかったので, ピリミジンダイマー以外で修復合成の対象となるDNA損傷が細胞分化とともに蓄積増加し, 分離した葉肉プロトプラストの培養初期にそれらDNA損傷の修復が行われると考えられた.
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