研究概要 |
完全制御型の植物生産システム内で, サラダナ, ホウレンソウを養液栽培し, 生長速度, 乾燥生産, 葉面ガス代謝, 光合成産物の転流, 無機成分吸収等を調査し, 以下のような結果を得た. 1.高圧ナトリウムランプ(HPS)を用いた光強度試験では, 両作物とも生育全期間を一定とするより, 生育段階により15→20→25KlXと光を漸増するほうが, 生育速度, RGR, 全乾物重ともに高く, 体内の全窒素中NH4-N含有比が高くなり, 乾物率, 葉緑素含有量が増加した, 光質に関する試験では光合成有効波長域の総エネルギー量をほぼ一定にした場合, 650nm以上の可視光域が増加すると, 葉面積, SLAが増加し, 体内のC/N比が低下した. 500nm以下の可視光は葉長/葉幅を低下させ, 葉厚増, 蒸散量の低下により葉色が著しく増加した. 葉中のNO_3-N含量も短波光の増加によって増加した. F/ickerlampは光合成, 蒸散, 葉温にアクティブなリズムを強制し, 投下電力に見合う乾物生産は得られなかった. またB/ue系短波域が増強され, 細胞伸長の抑制, Ca, Mg, K等カチオン吸収の抑制が顕著となった. 2.野菜としての商品性を向上させるためには, NARやRGRが最大となる条件よりも, むしろ作物の生長を適度に抑制する「ストレス付与」が必須であり, ストレスとして好ましい条件は, CO2施用600ppm以上, 培養液中の全塩濃度の上昇, NH_4-N濃度2me/lの確保等が明らかとなった. 特にHPSのような相対的に短波放射の少ない光源では, アンモニアイオンの消長が生育速度のみならず, 草姿, 葉色, NO_3-N含量, アスコルビン酸含量等の外観, 内容成分に大きく影響した. 低気温と強風速管理は環境ストレスとしては上記要因より強く作用し, 好適範囲が狭く制御しにくい要因と考えた. NH_4-N, K, Ca等のカチオンを個々にリアルタイムで制御した場合の作物への影響は現在検討中である.
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