1.本研究は、卵黄タンパク質の前駆体ヴィテロジェニン(Vitellogenin-Vgと略)の合成誘導機構を明らにするため、マダニOrnithodoros moubata(O.m)とテントウムシHenosepilachana vigintioctopunctata(H.v.)の両種の比較を基本として、先ずVg誘導に関係する内分泌学的な、とくに幼若ホルモン(Juvenile Hormone-JH)の効果について、検討を行ない、次いでホルモンの遺伝子レベルでの作用機構を明らかにするためのVgcDNAのクローニングを試みたものである。 2.マダニに対するJHの効果は従来の報告にもかかわらず、今回全くそのVg合成誘導効果は認められず、JHのマダニに於ける位置は更に検討を要することとなった。プレコセンについても全く無効であった。しかし、神経分泌細胞に対し刺激作用をもつピレスロイド剤サイパーメスリン(CyM)は未吸血の雌成虫に対してVg合成の誘導活性のあることが判明した。更にCyMは雄成虫及び若虫に対しても吸血未吸血を問わず量的な差こそあれVg合成の誘導が認められ、今後CyMはVg合成誘導の機構を調べる有効な手段となることがわかった。 3.テントウムシではJHにより休眠が破れVg合成活性が開始されることを明らかにし、JHに対する感受性は羽化後約10日は高く、その後非感受性となり休眠覚醒後(羽化90日頃より)再び高い感受性を示すことを明らかにした。 4.マダニ及びテントウムシのVg合成の最も盛んな時期の脂肪体よりRNAを抽出し、Oligo-dTセルロースカラムによりpoly A(t)RNAを分離しOkayama-Berg法によりcDNAを合成しプラスミッドに組み込みライブラリーの作製を行なった。これよりVgに対する抗体を用いて夫々複数のVgcDNAクローンの分離を行ないcDNAの制限酵素地図の作製を行なった。今後これを用いたmRNAの定量、遺伝子構造の解析が可能となった。
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