研究概要 |
イネの耐塩性突然変異体を選抜するためにまずイネのNaCl吸収の機構を検討した. イネの幼苗を10mM NaClを含む基本培地で生育させ1週間後に^<22>Naを投与した. 放射能は約2分後から地上部でも検出され, その値は直線的に増加した. イネを放射能を含まない培地に戻しても地上部から放射能は減少せず, 一旦地上部へ移動したNaは再放出されないことが示された. また根への吸収は約5分の急激な立ちあがりののち一定となり, やはり直線的に増加した. 生長速度とNaの吸収速度から考えて, みかけの吸収速度は正味の吸収速度にほぼひとしく, 吸収されたNaの排出は根でもそれほど活発に行なわれていないことが判明した. さらにエフラックス・アナリシスの結果から吸収されたNaは根で4つのプールに入ることが明らかになった. このうちのふたつは細胞壁と液胞であると同定されたが, 残りのふたつについてははっきりしなかった. しかしイネの耐塩性を決定する地上部へのNaの輸送に関与すると考えられるプールが認められたことから, このプールの性質を明らかにすることが耐塩性の機構解明に意味があると考えられた. 以上の実験は主に金南風について行なったがTaichung 65でも同様の結果が得られた. さらに突然変異体を用いて地上部への^<22>Naの移行速度を検討したところ, 種間に差は認められるものの個体間の差も大きく突然変異処理がイオンの吸収速度にも影響を与えていることが示された. 検討を行なった約100系統においては現在のところ特にNa吸収速度のひくいものは認められなかった. 現在スクリーニングを継続中である.
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