研究概要 |
酸化油脂を経口摂取したときの生体毒性の発現機構を知るため, リノール酸メチルヒドロペルオキシドおよびその二次酸化分解生成物(主にカルボニル化合物)を経口投与したときのマウス免疫系組織への影響を調べた. C67BL/6系雄マウス(体重20〜30g)に精製リノール酸メチルヒドロペルオキシド(過酸化物価=6100meq/kg)を90, 190, 270, 310mgずつ経口投与した. また別にヒドロペルオキシドの分解物(カルボニル化合物)を経口投与した. 投与24時間後に, 臓器重量正測定するとともに, 各種臓器組織をHE, PASおよびズダンIII法で染色し, 組織像(肝臓, 胸腺, 脾臓, パイエル板など)を光学顕微鏡で調べた. また, 血清GOTとGPTの活性を測定した. リノール酸メチルヒドロペルオキシドなどの脂質過酸化物を投与したときの胸腺細胞をフローサイトメトリーによるドットプロット分析に供し, 胸腺細胞の変化を調査した. リノール酸メチルヒドロペルオキシドなどの脂質過酸化物を経口摂取したマウスの免疫系組織(胸腺, 脾臓)の重量は顕著な低下を示した. とくに胸腺上皮組織では, 浸潤しているリンパ球の著しい壊死が観察できた. この時胸腺ホモジネートからの自発的な極微弱化学発光量は顕著な増加を示した. また脂質過酸化物を摂取したマウスの脾臓においてはヘモグロビンの変性を示すヘモジゼリンの蓄積が認められ, 一方, 小腸パイエル板においてはリンパ球の壊死が顕著に認められた. ヒドロペルオキシド投与マウス胸腺のリンパ球をフローサイトメトリーで分析すると, 免疫応答能の欠落した容積の小さいリンパ球群の出現が新たに認められた. これらの結果から, 脂質加酸化物を摂取した場合に生体の免疫系組織に大きな障害のあらわれることが明らかになった.
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