研究概要 |
この研究は林木の直径生長を計算機上で模型実験しそれを間伐などの結果予測に利用することを目的としている. 今年度の研究実績は以下の通りである. 1.三重県尾鷲市のヒノキ試験林の1570本のすべての樹木について, 1932年から1977年までおよそ50年に亘る生長記録を取りまとめ, 文献(1)として公表した. 以下の研究はすべてこの資料を用いて行われた. 2.林木の生長に関するパラメータを最小自乗法によって求めるための直接探索のプログラムを開発し, 上記資料のうち, およそ1500本すべての生長パラメータを求め, またそれらの平均, 分散およびそれら相互間の相関係数などをえた. この方法および結果は文献(2)に公表された. 3.上記のパラメータとその樹木の林齢24年での直径が, 四次元対数正規分布に従うことを明らかにし, そのことを用いて, 24年直径からすべての生長因子の組をモデルとして作成する方法を作り, これによって林分の生長のシミュレーションを行った. この内容は文献(3)に公表されている. 4.直径生長の結果から収穫材積を推定するための求積式の当嵌めにあたり, 偏差の正, 負が偏在するかどうかを, 偏差の分布のモーメントを用いて判定する方法を考案し, 文献(4)として公表した. 5.上記(3)の方法を尾鷲試験林のすべての樹木に適用し, これを二通りの間伐強度で作業されてきた試験林の実際の生長と対比した. 前半20年での当嵌まりは標準偏差2mmの程度で一致したが, 後半20年では平均直径でおよそ1cm〜2cmの過少評価となった. この結果は文献(5)として投稿中である.
|