研究概要 |
1.木質構造の水平構面による力の伝達を評価するための静的加力試験と振動試験の比較 建設段階を追って各種木質実大住宅の振動試験を小型起振器を用い実施した. 各段階で建物の固有振動数, 減衰定数及び共振点付近での変位, 位相モードを求めた. 耐力壁の増加, 壁量偏在の効果と水平構面の剛性すなわち吹抜けの効果について静的加力試験との比較を行い以下の結果を得た. (1)振動試験の固有振動数から算出されるバネ定数は静的試験からの耐力壁の耐力の総和と相関が高いので, 耐力推定に有効である. (2)床構面が比較的剛な場合には力の分担は各壁線に配されている壁量に比例する. 耐性が低くなると変位の偏在が生じるようになり, 加力付近の変位が大きくなり, 水平構面の変形も大きくなる. とくに吹抜け部分で力の分担が区分される傾向にある. (3)振動試験では吹抜けや耐力壁の偏在があると, 個々の空間での固有振動数が区分され, 平面上の逆位相を容易に生じる. この傾向は建設初期すなわち軸組段階で明瞭である. (4)建物の仕上げが施され一体化してくると, 剛性も高まり, 耐力壁の量の分布に対応した変位が生じ, 全体的に固有振動数のピークがブロードとなる. 2.床, 屋根構面の開口や形状による力の偏在および伝達機構への影響度 床開口が大きいほど剛性低下が生じるが, その低下はある比率をこえると著るしくなる. 切妻屋根の場合, 合板貼りが千鳥になる桁行加力の方が剛性は高く, 平面を保ち, 力の伝達に有利に働く. 床剛性と耐力壁の剛性から外力の釣り合成が導びかれ, 直接影響を及ぼすことが分析できた. 最大耐力は耐力壁の量に支配されているが床構面の剛性の低下は力の偏在による局部的な損傷の生じる可能性がある.
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