研究概要 |
ホンダワラ類の種苗生産法としての組織培養法の確立に必須な植物ホルモンの種類と濃度との関係について、その最適条件を知ることを目的に検討を行なった。実験に供した植物ホルモンはオ-キシン系6種、サイトカイニン系3種、その他3種の計12種で、これらを10^<-2>、10^<-1>、1、10、10^2、10^3、10^4μg/lの濃度になるように溶かした。これらに1〜5mmの大きさに細断したアカモクの藻体を入れて増養し、藻体切からの仮根形成、新芽形成を観察し、好適ホルモンの種類・濃度を調べた。 仮根形成は植物ホルモンを添加した全ての実験区でみられたが、無添加区では全くみられなかった。仮根形成頻度はオ-キシン系ホルモンではその濃度が増加するに伴って高くなる直線型と飽和曲線型を、サイトカイニン系ホルモンでは凸型になる傾向が得られた。これに対して新芽形成に対する植物ホルモンの効果は、前者では濃度に無関係の型と凸型に、後者では濃度に無関係となる傾向が得られた。仮根形成頻度が安定して高かったのは2,4Dで、その濃度は10^<-2>〜10^4μg/lで、またα-NAAでは10^3μg/lの時だった。新芽形成頻度が安定して高かったのはIAA,α-NAAの10μg/lの時だった。これら2種以外では2,4D,IPAで比較的高い値が安定した状態で得られた。仮根形成部位、新芽形成部位について切片を作りその形態を観察したところ、前者は表層に近い髄の細胞が分化して仮根細胞になっており、後者は表層部に生長点が形成されていた。このような形態的特徴は、正常な初期発生でみられる発生様式に一致していたことから、植物ホルモンを添加することによって藻体片から形成されたアカモク再生個体は種苗としての条件を備えていることがわかった。また、組織培養に用いるのに有効な植物ホルモンはIAA、α-NAA、2,4Dの3種で、中でも2,4Dが最も適した植物ホルモンであることがわかった。
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