研究概要 |
沿岸漁業の活性化をはかるために先端的な技術の導入が要望されている. 特に音響利用漁業の期待は大きい. そこで沿岸域に於ける音環境と水中音の伝搬特性を測定し, 水中音による魚群の制御と誘導, および水中音の漁業への応用について研究した. 研究の実績と今後の展開を以下に述べる. 1 餌料生物や沿岸魚類の生態に関与する沿岸海域特有のフライングノイズは超音波領域に達し, パルス幅は約4msであった. この結果から既開発のバイオテレメトリー(ソノブイ方式)の受感パルス幅を8ms以上として信頼性の向上をはかった. また, 雑音電波の実測結果を参考にして解析回路を改良し, 電波障害を受けやすい海洋牧場での魚類行動の測定を可能にした. 2 海洋牧場(大分県)における放声音圧は10mで約140dB, 100mで約120dBであった. これから有効範囲は約500mと推定した. 3 バイオテレメトリーにより音響馴致魚(タイ)の音響反応を測定したところ, 標識魚は放流点付近に測定期間(2日)滞在し, 放声時には給餌搭に接近し, 誘致効果を確認した. 過去のバイオテレメトリーによる追跡における広範囲の遊泳事例は追跡船のエンジン音の影響が考えられるから, 本研究により開発したソノブイ方式の有効性が実証された. 4 三重大学練習船勢水丸の研究航海において, 釣獲率に明瞭な差は見られないが集魚灯下のサバの魚探記録が水中放声により濃密化することを確かめた. さらに此の反応を追及するために, メーカーの技術援助を受けて超音波利用の遊泳速度測定装置を試作中である. 5 現在, 沿岸域における空港埋め立て工事や河口域に於ける発電所建設工事に伴う水中音の漁業への影響が問題視されている. 今後, 工事現場における魚類行動を解析することは工事音の漁業への影響の軽減および公害対策上有意義であろう.
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