研究概要 |
アマノリ属細胞壁多糖はβー1,4ーマンナン,βー1,3ーキシラン、ポルフィランから構成されている。著者は自然界からアマノリ属細胞壁分解酵素を産生する細菌の探索を行い、βー1,4ーマンナナーゼ産生細胞をニジマスの腸内容物から、βー1,3ーキシラナーゼ産生細菌を海底泥から、ポルフィラナーゼ産生細菌を海藻から分離した。一般に、細胞融合を成功させるためには、プロトプラストを大量に作出し、再生させる技術と共に、融合体を選別するための指標が必要とされる。著者はアサクサノリ野生株を培養中、葉状体が通常の赤褐色のものとは異なった緑色の変異株を単離した。よって、上記3種類の細胞壁溶解酵素を用いて、スサビノリ野生株とアサクサノリ緑色変異株から多数のプロトプラストを作出し、細胞融合を行った。すなわち、両藻のプロトプラストをポリエチレングリコール(PEG)で処理して、融合させた。PEG処理した融合または非融合のプロトプラスト混液を数週間培養すると数mmの褐色または緑色の不規則なカルスまたは正常な形の幼芽に生長した。これらが3〜8cmの葉状体へ生長した時、仮根部半分が褐色、先端部半分が緑色をした1枚のキメラ葉状体(キメラーI)が発見された。キメラーIの緑色部は成熟すると成熟細胞が褐色に変化した。キメラーIが放出した単胞子からは、褐色または緑色の葉状体に加えて、緑色と褐色から成る区分状キメラ葉状体が多数得られた。これら2代目キメラもまた、成熟すると緑色部の成熟細胞は褐色に変化した。2代目キメラから放出された果胞子の糸状体から生じた殻胞子は38.4%という高い割合で褐色と緑色からなる区分状キメラに生長した。以上の結果から、キメラIはスサビノリ野生株とアサクサノリ緑色変異株のプロトプラスト融合体から再生した雑種ではないかと推測される。 本研究の成果は細胞融合によるノリの品種改良に大きく貢献するであろう。
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