研究概要 |
体重522〜791gのコイを水10lに1, 3, 4あるいは7尾入れ収容密度63, 200, 243および502g/lの4区を設けて, コイの状態と水質の変化を24時間みた. (水温22°C). 十分な通気を行ったので, 溶存酸素はほとんど低下せず, 遊離二酸化炭素の増加も弱干であった. 24時間後, 243g/l以下の区では斃死は見られず, 全アンモニア濃度(NH_3+NH^+_4)は15mgN/l, 非解離アンモニア濃度(NH_3)は1.2mgN/l以下であった. 502g/lでは7尾中3尾が斃死し, 出血により水が褐色になった. 水のNH_3+NH^+_4濃度は40mgN/l, NH_3濃度は1.8mgN/lであった. カニューラを口腔, 鰓腔および背大動脈に装着したコイを呼吸室に収容し循環水量を変えることにより, 高密度収容時(232〜295g/l)のコイの呼吸状態を24時間みた. NH_3+NH^+_4濃度7mgN/l, NH_3濃度0.36mgN/lからNH_3+NH^+_4濃度20mgN/l, NH_3濃度1.37mgN/lの範囲では, 呼吸頻度はやや減少したが毎分鰓換水量は増加した(約40%). 動脈血の酸素分圧は, 換水量が増したにもかかわらず低下した. それでHbの酸素飽和度が45%低下した. しかしながら同時にHt値, Hb濃度が高くなったので動脈血酸素含量の低下は30%に留った. この範囲では, コイは外観上静かで酸素消費量も正常時と等しいか弱干低い値であった. これらの個体において, 循環水をアンモニアを含まない大量の水に切替えると, 呼吸運動が増し, 酸素消費量は2時間後に正常時の2倍に達しその後徐々に低下した. 従って,コイは, アンモニア濃度範囲ですでに弱い酸素不足の状態にあったと考えられる. NH_3+NH^+_4濃度25mgN/l, NH_3濃度1.2mgN/l以上になると, 従来報告されていように呼吸頻度が著しく増加し, 酸素消費量も2.6倍に達した. この時も, 血液性状や循環水を切替えた後の酸素消費量の変化から, コイは酸素不足の状態にあったと考えられる.
|