研究概要 |
アマノリ葉体からのプロトプラスト分離のための酵素の種類について検討した結果, パパインーアワビ酵素によってプロトプラストの分離が可能であったが, 細菌P-1株の培養ろ液から調製した酵素による分離がより効果的であった. 細菌酵素による処理によって, アマノリ7種類の葉体から酵素液1ml当り10^3〜10^4個のプロトプラストが分離された. アワビ酵素はヒトエグサ, アナアオサなど緑藻類のプロトプラスト分離に効果的であった. それらのプロトプラストをさらにプロテアーゼ処理することによって, 異種プロトプラスト間の融合率が高くなった. 融合細胞は, プロトプラストの混合懸濁液にポリエチレングリコール4000又は6000の粉末を溶解, 静置した後, 5%マンニトールおよび2%塩化カルシュウムを含む希釈液の添加によって得られた. 無菌条件下でのプロトプラスト分離には, 各葉体をクエン酸, ヨウ素あるいは抗生物質溶液で処理するのが適当であった. プロトプラストの発生は, 浸透圧調製剤および抗生物質の添加によって抑制された. 無菌条件下で分離されたプロトプラストは, 緑藻類では多数が発生したが, アマノリ類では発生率が低かった. スサビノリを中心としてアマノリ異種間, アマノリとアナアオサ, ヒトエグサ間の融合細胞の作成に成功した. それらのうちスサビノリとクロノリ, ウップルイノリ, マルバアマノリ間の融合細胞のいくつかは細胞壁を再生し, 葉体に生長した. それらのうち糸状体期を経たF_1葉体を室内および海で育てた結果, それらの色調は両親のいずれか一方の性状が発現され, 中間色のものは認められた. また, 耐病性, 品質においては, 従来種より優れているものはまだ得られていない. 育種のためのプロトプラストの分離, 融合に関する方法, 技術については, 所期の目的をほぼ達成したと考えられる. 今後は, 多くの融合細胞から再生体を得るための培養方法, 条件の確立が必要である.
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