研究概要 |
肉用種種雄牛の選抜は能力検定と後代検定により実施されているが, 現在の検定実施状況を調査した結果, 能力検定受検候補牛の選定段階で選抜基準は不明であるが, 即に極めて強い選抜圧が加えられており, 選抜種雄牛群の遺伝的能力への影響が無視し得ないことが明らかになった. そこで本年度は, 予備選抜段階に用いる指標と改良目標形質との相関の高さや予備選抜率が能力検定受験牛の能力水準にいかなる影響を与えるかを中心に検討した. 方法としては, Xを予備選抜指標, Yを改良目標形質とし, これらが相関rの2変量標準正規分布に従うとして, 種々の選抜率とrを組合せた条件下でのXを与えた時のYの条件付き確率と平均, rの変化を算出した. Xによる予備選抜(選抜率p=2.5〜60%)の実施後, 予備選抜集団でのYの一定水準(YkA1E61, 2, 3)を越える割合は当然のことながらrが高まるにつれ増加した. P(YkA1E61)を50%以上にするのに必要なrの高さは, p=2.5%では0.4以上, p=5%では0.5, p=10%では0.6, p=20%では0.7以上であり, p=30%では達成できなかった. Yk≧2とするとp≦10%で予備選抜指標を用いる効果が認められるが, P(YkA1E62)>50%を達成することはr=0.9とp=2.5%の組合わせを除き不可能であった. 予備選抜集団の平均はいずれのpにおいてもrの上昇に伴って負から正へと直線的に増加し, 勾配はpが小さい程大きかった. 予備選抜後のrは, p=60%では65〜89%程度, p=2.5%では35〜65%程度に減少し, 元の係数が低い程低下量は大きかった. 予備選抜後に一定の最終選抜率になるように個体選抜を実施した場合, rが高い程期待選抜差は高くなるが, p=60〜40%と比較的予備選抜圧が低い場合にはrの上昇による効果は小さかった. 以上のように, 予備選抜指標の相関係数の高さの価値は選抜率の組合せによって異なり, 牛群で採用しうる方式を基に予備選抜指標を得るための経費を考慮して予備選抜指標の検索を行うことが必要といえる.
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