研究概要 |
近年, 飼料効率の向上や肥育効率の向上を目指した畜産技術の開発が行われている. 抗生物質で, 生体膜のイオン透過に対して影響を与え, イオノフォアと総称されているものの1種であるモネンシンは, 第一胃内微生物に作用して発酵パターンを変えたり, タンパク質分解や脱アミノ活性を抑制することにより肥育牛に給与すると飼料効率を約10%改善することから, 肥育牛の生産性を改善する化学物質として応用されている. しかし, 下部消化管機能にどのような影響を及ぼすかは知られていない. 本課題ではめん羊を6頭用い, モネンシンを飼料摂取量の30ppmに相当する量を第一胃内に投与することにより, 下部消化管において重要な消化機能を担っている膵外分泌や消化管運動がいかなる影響を受けるかを調べた. 1時間を投与前の対照期間とし, その後の2週間を投与期間とした. 1.第一胃内液中の揮発性脂肪酸(VFA)の比率:プロピオン酸は有意ではなかったが増加する傾向が見られ, n-酪酸とn-吉草酸の有意な低下が見られた. 2.膵液流量は757±33ml/day(平均±標準誤差)から投与第1週に529±29ml/day, 投与第2週には542±24ml/dayと減少する傾向が見られたが, 有意ではなかった. 膵液中タンパク濃度, アミラーゼ活性およびトリプシン活性は, 投与前それぞれ37.0±2.0mg/ml, 438±40unit/mlおよび5.17±0.56unit/mlであったが, 何れも投与後に有意な増加が見られ, 最高値はそれぞれ, 48.7±4.8mg/ml, 692±72unit/mlおよび8.44±0.78nit/mlであった. トリプシンの比活性(単位タンパク当たりの活性)は有意な変化を示さなかったが, アミラーゼの比活性は有意に増加した. 3.第一胃, 第四胃および十二指腸の内圧変化をモニターすることにより, これらの部位の運動を記録したが, モネンシン投与前後において顕著な変化は認められなかった.
|