研究概要 |
1 非タロム系なめし剤の反応性について 塩基性硫酸アルミニウム, グルタルアルデヒドなどを, 溶液のpH, 温度, イオン強度などを変えて皮との結合をしらべた. アルミニウム塩は, pHが高いと沈澱を生じ, 低いと結合量が低く, pH3.6あたりが皮との結合が最適であり, 一度結合したアルミニウム化合物でもpHを3.0の硫酸・塩化ナトリウム混合液に平衡させるとその大部分は皮から溶脱することがわかった. これらのアルミニウム塩の錯体組成と皮への結合性において溶液中の塩, 特にマスク作用のある有機酸塩の存在が大きな影響を及ぼすことが, イオンクロマイグラフなどを用いる溶液組成の分析から明らかとなった. グルタルアルデヒドの場合はpHが高いほど結合量が多いが, 重合などの副反応が多くなること, 皮との結合は不可逆であることがわかった. 2 非クロム系なめし剤の革の耐熱性におよぼす影響 グルタルアルデヒドやアルミニウム塩単独でなめし革の耐熱性(熱収縮温度)は60-70°C程度で低かったが, 他のなめし剤と複合させると100°C程度まで上昇させることができることがわかった. 3 革の物性について 革の機械的性質に関しては, アルミニウム塩は一般に線維のこう着により組織を硬化させる傾向があるが, グルタルアルデヒドなどの他の非クロム系なめし剤は繊維束の分離を促進し, 組織を柔軟にする硬化が大きいことが認められ, これらの物性を評価するパラメータとして見掛比重が有効であることがわかった. 以上の結果から, 非クロムなめし剤の複合使用により新しい物性の新素剤の開発が可能であるとの見通しを得た.
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