研究概要 |
1.まずL.casei subsp.alactosusのストレプトマイシン耐性株(Lac^-Str^rのプロトプラスト化とその再生条件を検討したところ, 0.9Mラクトースで高張にしたHEPES緩衝液中で, 細胞壁溶解酵素のリゾチームとムタノリシンを併用してプロトプラスト化し, 0.5Mマルトースあるいは0.25Mマルトースと0.25Mスクロースを組み合わせた再生培地上で高い再生率(約20%)を示す条件を得た. この方法によりS.lactisでも1%以上の再生率を示していた. しかしL.bulgaricusではプロトプラスト化はするが再生した集落を確認できず, S.thermophilusでは溶菌しなかった. 上記条件でL.casei subsp.rhamnosusのストレプトマイシン感受性株(Lac^+Str^S)のプロトプラストとの融合により, Lac^+Str^rの融合株を作出した. 2.本研究で得られた融合株および従来当研究室において接合法により得られたL.casei subsp.alactosusの乳糖発酵性変異株を供試菌として, それらのプラスミド組成を検討した. プラスミドの分離は, スクロースを含むトリス緩衝液中でN-アセチルムラミダーゼによって溶菌し, プロティナーゼKで除タンパクを行った. 変異株のプラスミド組成の分析結果から, 融合株および接合株の一部にはプラスミドを含まない菌株があったが, 他の変異株はすべて受容菌と同一のプラスミド組成を示した. また受容菌はβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)およびフォスフォーβ-ガラクトシダーゼ(β-Pgal)活性のいずれも示さないのに対し, 融合株および接合株はいずれもβ-gal活性を示しており, β-Pgal活性を示す菌株もあった. 3.以上のことから, 乳糖非発酵性Lactobacillus caseiの乳糖発酵性は, 染色体上の遺伝子に支配されている可能性が強く, 他の菌種や菌属との融合や接合により乳糖発酵性を発現するようになったと推定される. しかしその発現機構は今後の検討課題である.
|