研究概要 |
シグマ社のEpidermal Growth Factor(EGF)を用いた実験を行い, 下記の結果を得た. 1.下垂体前葉の細胞分化に対するEGFのin vivoでの影響:13-16日令のラット胎仔に子宮内でEGF(1μg)を注射し, 出産直前に胎仔下垂体を固定し免疫染色を行った. その結果は, EGFによる影響が認められなかった. in vivoでは, 下垂体の分化に充分先行してEGFを投与するのが技術的に困難なため, 明確な結果が得られなかったと思われる. 2.前葉分化に対するEGFのin vitroでの影響:下垂体前葉の分化が起る充分前の時期(胎令11-12日)に原基を分離して, EGF存在下で器官培養し, 無処理対照例と免疫組織学的な比較を行った. その結果, EGFにより時に培養片の大きさが顕著に増加する場合が認められた. このような場合, 各前葉ホルモンに対する免疫陽性細胞の数は増加を認めず, またそれらの分布は疎になっており, ホルモン産生細胞以外の他の細胞系の増殖が起っていることが示された. また他の多くの例では, 対照例との間に培養片の大きさの差が無く, 周辺より上皮様の細胞の伸展が観察された. これらの場合, 免疫陽性の細胞はEGF処理をした方が有意に少なかった. 単層培養を行ってから, 標識EGFを超音波破砕装置を用いて均一化し, 培養組織のどこにそれが結合するかを調べると, 中心部の腺細胞に分化する領域には, ほとんど結合が見られず, やや弱い結合能が周辺の上皮様の部分に認められた. 以上の事実より, EGFは原始的な未分化上皮の増殖を促進するものの, 下垂体前葉ホルモン産生細胞に分化する過程を抑制すると結論される.
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