研究概要 |
1.昨年までにネコ大脳高次視覚領の一部(外側上シルビウス領, LSAと略す)が眼の焦点調節系に関係することを自発性レンズ屈折力変化との相関等の電気生理学的な実験方法を用いて示唆したが, 本研究ではLSAのレンズ関連ニューロンの視覚応答を調べ, 従来の結論を支持する結果を得た. 2.視覚応答を効率よく得るため, 従来の〓クロラローズ麻酔を笑気麻酔に変更した. レンズ関連ニューロンは従来通り, (1)レンズ屈折内の自発性変化に先行し活動する, (2)記録部の微小刺激によりレンズ屈折力増加がみられることにより同定した. レンズ屈折力はキャンベル型赤外オプトメータでモニターし, 細胞活動・微小刺激にタングステン微小電極を用いた. 大脳細胞の視覚応答は動物の眼前に置いたスクリーン上で手動により視標を動かし, さらに視標提示装置により視標を動物に対して奥行き方向(遠近方向)に動かすことにより調べた. 結果はオフラインデータ処理により定量化した. 3.61個のLSAニューロンの内, 38個はスクリーン上の視標の動きに応答し, 奥行き刺激には応答しなかった. 3個は動物へ接近する視標の動きに対して, 顕著に応答し, スクリーン上での動きには応答しなかった. (選択的な接近細胞). 残りの20個はこの両者の刺激に応答した. (非選択的な接近・あるいは離反細胞). レンズ関連ニューロンは6個記録されたが, このうち2個は選択的接近細胞であり, 4個は非選択的接近細胞であった. 細胞活動に200-700ミリ秒遅れて, レンズ屈折力の増加がみられた. これらのニューロン活動は1眼を遮閉すると減弱するが, なお顕著な変調を示すため, その応答は両眼視差・視標の大きさの変化等複数の視覚パラメータに依存すると考えられる. 4.これらのニューロンが自発性変動・視覚刺激の両条件下でともに屈折力変化に先行して活動することは, LSAが焦点調節に重要な役割を果たすことを示唆する.
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