研究概要 |
本補助金が交付になった頃より, 成熟卵母細胞を持つアフリカツメガエルが全国的に品切れとなり入手不能に陥ってしまったため, 未熟ガエルを研究室で肥育成して, 実験に使用可能な成熟卵母細胞の出現を待つこととした. この間にバゾプレッシン拮抗薬に関する研究を行った. 一般に細胞膜に存在するホルモン薬物受容体量は細胞周囲のアゴニスト濃度に依存し, アゴニスト濃度が高くなると受容体量は減少する. 逆にアンタゴニストはアゴニストによる受容体量減少を抑制することが広く知られている. 我々は腎臓髄質のバゾプレッシン受容体量が, この常識に反して, 或る種の昇圧(V1)抗利尿(V2)アンタゴニストのin vivo投与によって顕著に減少することを見出した. このV_1V_2アンタゴニストはin vitroでは完くアゴニスト様作用を示さなかったにもかかわらず, in vivoに投与してみると百グラム体重当り3ナノモルの投与量で腎臓髄質細胞膜のバゾプレッシン受容体量は顕著に減少し, ^3Hアルギニンバゾプレッシン結合量が正常時の10%にまで低下し.バゾプレッシン依存性アデニル酸シクラーゼ活性も正常時の15%にまで低下した. 以上のことから, 腎臓髄質のバゾプレッシン受容体の特殊性によって或る種の特殊なアンタゴニストによって受容体量が減少する可能性と, もう一点, in vitroでは完全なアンタゴニストでありながらin vivoではアゴニスト的作用を持つ既存のアゴニストーアンタゴニストの中間的位置を占めるアンタゴニストが存在する可能性が示唆された. この報告書を書いている昭和63年3月の時点で, 長時間飼育してきたアフリカツメガエルの一部に, 不充分ながらメッセンジャーRNAの微量注入によってアドレナリン性β受容体の発現可能な卵母細胞を持つものがようやく出て来たことを附記する.
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