研究概要 |
ブラジキニンなどの発痛物質により惹起こされる痛み反応がプロスタグランジン(PG)により増強されるいわゆる痛み反応増強作用のメカニズムを明らかにするため摘出中枢標本を用いて検討した. 発痛物質にはカプサイシンを, 摘出標本としては摘出脊髄および摘出脊髄一尾標本を用いた. 〔摘出脊髄一尾標本における成果〕1〜3日令ラットから摘出脊髄一尾標本を作製した. 脊髄と尾を別々の灌流槽に固定し, 酸素を十分含んだ人工脳脊髄液を5〜6ml/minの速度で灌流した. 尾に少量のカプサイシン(0.5〜2μM,100〜200μl)を灌流適用すると侵害反射の一つと考えられる脱分極性の反射電位が腰髄筋前根から細胞外電極を介して記録された. この反射電位は適用するカプサイシンの量に応じて増減した. また, この電位は尾の灌流液中に予め1μM〜4μMのPGE_1あるいはE_2を適用することにより著しく増強した. しかし, PGD_2,PGF_2およびPGI_2の前処置では何ら影響が認められなかった. 〔摘出脊髄における成果〕PGの痛み反応増強作用は一次知覚ニューロンの末梢端でみられる現象である. しかし, , 知覚ニューロンの末梢枝は極めて細く, また組織中分布も複雑なため末梢端でPGの作用を検討することは不可能であった. そこで今回は一次知覚ニューロンのもう一つの側枝すなわち中枢枝の終末に対するPGの作用を検討し, 末梢端でみられる現象を類推した. 新生ラットの摘出脊髄に10nM〜1μMのPGを適用すると脱分極性の電位変化が腰髄節の後根から記録された. 脱分極の大きさはPGE_1>PGE_2>PGF_<22>>PGD_2の順であった. PGE_1およびPGE_2による脱分極は外流にTTXを添加したり, あるいはCa濃度を0.1mMに下げシナプス伝達を抑制した条件下でも認められた. 以上の結果からPGの痛み反応増強作用は一次知覚ニューロン末梢端の脱分極に由来するものと思われる.
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