研究概要 |
パーキンソン病などの錐体外路系疾患や老人性痴呆などにおいて, 中枢の各種アミンニューロンに変性がみられ, 排尿障害をおこすことから, ノルアドレナリン産生ニューロンから成る青斑核が排尿に関し重要な役割を演じていることが考えられ, このことを明らかにするため, アルファクロラロースネコを用いて研究を行った. 青斑核を電気刺激すると膀胱内在は上昇し, この内圧上昇は, 下部腰髄域の脊髄腔内に投与したフェントラミンおよびα_1遮断薬のプラゾシンにより制御された. しかし, この内圧上昇は同様にして投与したα_2遮断薬のコヒンビンおよびβ遮断薬のプロプラノロールによっては抑制されなかった. レセルピンを実験の24時間前に投与してカテュールアシンを枯渇した動物においては, 青斑核を刺激しても膀胱内圧の上昇は認められず, レードーパを静注した後に青斑核を刺激した場合に膀胱内圧は上昇した. この内圧上昇もプラゾミンの脊髄腔内投与により抑制された. また, 青斑核刺激による膀胱の内圧上昇は頚髓切断により遮断された. さらに, 膀胱内に生理的食塩水を注入し, 内圧を上昇させた時におこる自発性の膀胱収縮は, 脊髄腔内へプラゾシンを投与した時, および頚髄を切断した時には消失した. 仙髄の排尿中枢において, 青斑核を刺激した時には, 潜時50〜70msecにてスパイクを発射するニューロンが見い出された. これらの研究成績から, 膀胱内在が上昇した時, この情報が脊髄から上行して, 直接あるいは間接に青斑核に達し, このノルアドレナリンニューロンが仙髄外側部のニューロンにあるα_1受容体を介して活性化し, 骨盤神経の刺激となって膀胱を収縮させる, と結論された.
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