研究概要 |
赤血球内酵素の一つである3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素をモデル酵素として, 赤血球内酵素タンパク質が赤血球の寿命と共に安定に存在する機構の研究を行った. 1. MSTの等電点測定法の確立 MSTのタンパク化学的性質を等電点の変化を指標として研究するために等電点測定用標準タンパク質として, リボヌクレアーゼA-グルタチオン混合ジスルフィド(RNase-SG)を合成し, 等電点測定に有用であることを明らかにした. 2. ラットMSTの等電点とその変化 RNase-SGを標準物質としてラットMSTの等電点を測定し, 5.9であることを明らかにした. 非還元条件下で測定すると, 5.9以外に5.5のピークがみられた. 溶血液を酸化型グルタチオンで処理すると等電点が酸性側(5.7および5.5)に変化した. 赤血球をジアミドで処理すると, 同様の変化を示した. 以上の結果は, MSTにグルタチオンが結合したことを意味しており, MSTの精製とMST-グルタチオン混合ジスルフィドの調整および安定性の研究を行っている. 3. MSTのmRNAの分離およびMSTの一次構造決定の準備として網状赤血球におけるMSTの研究を行っている. 4.MSTの酸素化学的性質研究のために, 基質3メールカプトピルビン酸の類似体であるS-メチルー3-メルカプトピルビン酸およびS-メチルー3-メルカプト乳酸を合成した. 現在これらを用いた研究が進行中である. 5. オキソチアゾリジンカルボン酸を用いて細胞内グルタチオン及びシステイン濃度の上昇を目的とする研究を進めている. 又, これと関連して亜硫酸およびチオ硫酸の定量法を開発した.
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