研究概要 |
目的 アルコール摂取による肝障害は, 近年増加する傾向にあり, 医学のみならず社会的な問題となりつつある. アルコール代謝に関与する2つの酵素, アルコール脱水素酵素(ADH)及びアルデヒド脱水素酵素(ALDH)には, 日本人と西洋人との間でアイソザイムのパターンが異なる事が知られていて, これが両民族間でのアルコール感受性の差になり, アルコール性肝障害の頻度に反映していると考えられている. 本研究は, アルコール摂取によるADH及びALDHの量の変化を, ラット及びマウスを用いて, 遺伝子発現の面から解析する事を目的とする. 結果 1.cDNAライブラリーの作製とスクリーニング;ラットのADH及びALDHのcDNAを単離するために, 正常ドンリュウラット肝よりpoly(A)RNAを精製し, λgt11ベクター及びランダムプライマー法を用いてcDNAライブラリーを作製した. 約10μgのpoly(A)RNAより, 約5×10^5の独立したcDNAクローンを得た. 平均したcDNAの大きさは約1.5Kbであった. ヒトのADHβ及びALDH-1のcDNAをプローブとして, スクリーニングしたところ, ADHプローブで1個, ALDHプローブで2個のpositiveクローンを得た. これらのcDNAクローンを現在塩基配列決定を行っているところである. マウスについては, 正常Balb/cマウス肝より精製したpoly(A)RNAを用いて, 同様にcDNAライブラリーを作製した. 2.Northern及びSouthern Blottingによる解析;ADHプローブでは, 正常肝のpoly(A)RNAで約1.65Kbのバンドを検出したが, 脳・腸・腎では発現が認められなかった. Southern Blotting では, 制限酵素BamH1では5.8Kbのバンド, EcoRIでは3.3Kb及び2.5Kbのバンド, HindIIIでは4.4Kb及び3.4Kbのバンドを検出した. ADHの遺伝子はsingle gene のカテゴリーに属すると思われる.
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