研究概要 |
1.小児non-T ALLの細分類:小児non-T ALL症例につき, 主として免疫電顕を用いて腫瘍細胞における免疫グロブリン産生を検索した. またこれにもとづいて小児non-T ALLの細分類を行なった. 検索した症例は31例あり, このうちH, L鎖ともに陰性であった症例は15例あった. このうちCALLAが陰性であった1例をnull cellタイプとし, 残り14例をcommom ALLタイプとした. 免疫グロブリンが腫瘍細胞に陽性であった症例のうちCμのみ陽性であった7例をpre-B cellタイプとした. これらの症例はすべて入鎖陽性であった. 免疫組織化学的検索では大部分の症例がCALLA(14/15) B_4(14/15)陽性であったが, B_1は約半数が(8/15)陽性であった. B_1 B_4などの単クローン抗体の検索結果と免疫グロブリン発現との間には明らかな関連性はなかった. 各亜型と予後との関連では, common ALLタイプの6症例は3年以内の再発は無かった. pre-B cellタイプでは5例中全例が3年以内に再発し, B cellタイプでは5例中全例再発した. 2.遺伝子再構成の検討:B cellタイプ3例, pre-B cellタイプ2例につきT_β, J_H, C_K, C_λ遺伝子再構成をSouthern blot法で検索した. B cellタイプの1例でT_βの再構成を認めたが, 他の4例はいずれもgerm lineであった. 免疫グロブリン遺伝子の検索では5症例ともJ_H遺伝子の再構成を示したが, L鎖の再構成を認めた症例はB cellタイプの1例のみであった. 以上の結果より免疫グロブリン産生にもとづく小児non-T ALLの分類は腫瘍細胞の分化度を明確に示すことが出来る点で有用な方法と言える. またpre-B, B cellタイプでは再発する傾向が強く, 予後を知る上でも有用であることが示唆された. 9症例で免疫グロブリンのL鎖が証明されたが, これらはいずれも入鎖でK鎖陽性例はなかった. この所見は小児non-T ALLにかなり特異的なものと考えられ, これらの症例における染色体分析および遺伝子再構成の研究が今後の課題である.
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